未来を創造する企業の姿 〜チームラボが描く技術とアートの融合〜
皆さん、こんにちは!キャリトリ編集部です。
今回はなんと、プロジェクション・マッピングなどで非常に有名な、あのチームラボ(teamLab)社にお話を伺いに行ってきました!
今回は、アートと技術の融合で世界を魅了し続けるチームラボ株式会社取締役であり、創業者の一人でもある堺大輔氏に貴重なお話を伺うことができました。創業から25年、従業員1,100人を抱える同社は、世界的に有名なアート事業と企業向けデジタルソリューション事業の2つの柱で成長を続けています。学生の皆さんにとって身近なアプリケーションも多数手がけており、累計1億6,000万ダウンロードを超える実績を持つ、技術力の高い企業です。
アートと技術が融合する革新的な企業

チームラボの魅力は、単なるテクノロジー企業でもアート集団でもない、独特な企業文化にあります。従業員の約70%がエンジニア、10%がクリエイティブ・デザイナー、残りが「カタリスト」と呼ばれる職種で構成されており、特に注目すべきは明確な階層構造や役職が存在しないことです。各分野の専門性に基づいた動的なヒエラルキーが存在し、案件や課題に応じて誰がリードするかが変わる職人的な組織文化を築いています。
カタリストという職種名は化学の触媒からの造語で、従来のプロジェクトマネージャーとは異なり、上から管理するのではなく、チームの反応を促進し拡大させる役割を担っています。このような組織構造により、創造性と技術力の両方を最大限に活かせる環境が実現されているのです。
堺氏が語るアート制作の哲学も非常に興味深く、「アイディアはそれほど重要ではない」という見解を示しています。発想や着想は制作時間全体の0.001%程度に過ぎず、残りの99.999%は具体的な技術的課題を解決することに費やされるといいます。例えば、泡の中に人が入るアート作品では、どの濃度の泡なら浮くのか、人が入っても安全なのか、どのような形状で作れるのかといった具体的な技術的課題を一つひとつ解決していくことが本当の仕事だと説明されています。
体験を重視したデジタルアート創造
チームラボの作品づくりで最も重視されているキーワードが「体験」です。同社の作品は単なる映像ではなく、すべてプログラムによって動的に生成されており、観客がその中に入って体験するインタラクティブな環境を創造しています。
特に印象的なのは「ボーダレス」という展示で、60個の異なる作品が空間内を自律的に移動し、互いに通信しながら新しい体験を創出しています。例えば、鳥のキャラクターが1つの部屋から別の部屋へと移動し、観客はその鳥を追いかけることで館内を巡ることができます。重要なのは、各作品が自律的に判断して行動していることです。

また、五感を通じた体験も重視しており、例えば1万3,000本の生きた蘭を使用した作品では、視覚だけでなく香りや湿度も含めた総合的な感覚体験を提供しています。このような体験設計への こだわりが、チームラボの作品を世界中で愛される理由の一つとなっています。
創造性を最大化する働き方とオフィス環境
チームラボのオフィス環境は、創造性を最大化するために細部まで設計されています。立って会話ができるスペース、紙のような素材でできた机での手書きスケッチ、プライベートとパブリックの境界が動的に変化する作業スペースなど、従来のオフィス概念を覆す環境を構築しています。

堺氏は人間の創造性について、現代人は平地での生活に慣れているが、狩猟民族時代の山間部での生活の方が脳神経細胞が多く活性化されていたという研究を引用し、立って作業することや緑を強制的に視界に入れることの重要性を説明しています。このような環境づくりにより、従業員の創造性と生産性を向上させているのです。
興味深いのは、チームラボではリモートワークを禁止していることです。堺氏はこの決定について、オンラインでのコミュニケーションでは情報量が大幅に減少し、特に複数人での合意形成が困難になるため、効率が著しく低下するという合理的な理由を挙げています。さらに、リモートワークによって個人が接触する情報源が限定され、創造性に必要な偶発的な出会いや多様なインプットが減少することを懸念しています。
グローバル展開と今後の展望
チームラボのアート事業は世界規模で展開されており、現在シンガポール、マカオ、サウジアラビア、アブダビに常設展示があります。特にアブダビの施設は世界最大規模の17,000平方メートルで、UAE政府の文化政策の一環として位置づけられています。また、京都には日本で最大となる10,000平方メートルの新施設がオープン予定で、これは京都市の地域再開発プロジェクトの核となる施設として60_年間の定期借地契約で運営される予定です。
同社ではAI技術も積極的に活用していますが、その用途は明確に限定されています。プログラミングの効率化、人の検知などのセンシング技術、データ分析などの分野では大いに活用している一方で、創造的なアウトプットの生成にはAIを依存していません。堺氏は、現在のGPTのような生成AI技術は確かに便利だが、チームラボが目指しているような複雑で独創的なアート作品の制作には、依然として人間の専門性と職人的な技術力が不可欠だと考えています。

取材を終えて
チームラボは、技術とアートの境界を超えて新しい価値を創造し続ける企業として、多くの学生にとって魅力的なキャリアの選択肢となるでしょう。同社の「クオリティの高いものを作る」という共通の価値観と、専門性に基づく職人的な組織文化は、継続的なイノベーションを生み出す土壌となっています。就活を控えた皆さんも、自分がどのような環境で成長したいか、どのような価値を創造したいかを考える際の参考にしていただければと思います。
皆さんの就活や将来について考えるきっかけとなるような、素敵な企業や人物を引き続きご紹介していきます。次回もお楽しみに!


