地球を守るハンガー屋さん〜COPACK社が築く循環型経済の仕組み~

皆さん、こんにちは!キャリトリ編集部です。

「わかりやすく言うとうちはハンガー屋さんなんです」と仰る、営業担当の斉藤光央さん。

今回は、環境問題を「ビジネス」の力で解決する先駆的企業。株式会社COPACKの斉藤さんにお話を伺いました。明るく情熱的な斉藤さんの語りから、働くことの本質的な意味について深く考えさせられる取材となりました。ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

誰もが知るブランドとの深いつながり

まず、COPACK社の主要取引先を聞いて驚きました。ユニクロ、GU、無印良品、イオン、セブンイレブン、しまむら これらは私たちが日常的に利用するブランドばかりです。実は私たちの生活の裏側で、COPACK社が環境問題の解決に取り組んでいたのです。

圧倒的な実績数字が物語る企業力

その規模は想像を超えています:

  • 年間1,000万本のハンガーを出荷・回収
  • 25年間で累計1億8,000万本のハンガーをリサイクル
  • 東京ドーム3,700個分の森林保護効果
  • 全国7,000店舗以上との循環型取引

「僕もこの数字を見てびっくりしました」と斉藤さん自身が語るように、まさに日本最大級の循環型ビジネスを展開している企業なのです。

SDGs先駆者としてのDNA

COPACK社の最も興味深い点は、SDGsという言葉が生まれる遥か前から環境ビジネスに取り組んでいたことです。


夢の島での原点

斉藤さんが熱く語ったのが創業者の体験談でした。1950年代、東京・夢の島は大量のゴミで溢れ、ハエが大量発生する深刻な環境問題の現場でした。そこで創業者は捨てられたプラスチックハンガーを見つけ、「これはもったいない」と回収を始めたのです。

「周りからバカにされながらも、これをもう一度綺麗にしてハンガーとして使えないかと考えた。それがCOPACKの原点なんです」

この精神が現在まで受け継がれ、「ハンガーを一本たりともゴミにしない」というスローガンが生まれました。

新的な循環システムの構築

・COPACKが構築したシステム

  1. 自社工場でハンガーを製造
  2. アパレルメーカーに納品
  3. 店舗で商品陳列に使用
  4. 専用回収ボックスで回収
  5. リサイクルして再製造

「今でこそユニクロや無印良品で衣料品回収が当たり前になりましたが、昔は『回収なんて』と言われました。一店舗一店舗回って『環境のためにやりませんか』と説いて回ったんです」

FSC認証への徹底したこだわり―森を守る責任―

COPACK社のもう一つの柱がFSC認証材を使った製品作りです。

完璧なトレーサビリティ

FSC認証は「どの森林で採った木で、どの工場で製材・加工し、どこに納品するか」まで完全に追跡可能な認証システムです。100%認証の取得は非常に困難で、「なかなか取れない厳しい基準をクリアしています」と斉藤さんは誇らしげに語ります。

スターバックス、セブンイレブン、マクドナルドなどで見かけるFSCマーク。実はこうした厳格な基準をクリアした証なのです。


卒業記念品で未来を考える

COPACK社は現在、全国500校にFSC認証材の卒業記念品を提供しています。

「SDGsってなんやねんって言っても、やっぱり実際にものとして手に取ってもらいたい。社会人になる皆さんにこそ、環境について考えるきっかけを持ってもらいたいんです」

地方創生への情熱―「ヒノキノヒ」ブランドが描く未来―

斉藤さんが最も情熱を注ぐのが「ヒノキノヒ」というオリジナルブランドです。

製材工場との感動的な出会い

無印良品にヒノキ製品を提案したいと思い立った斉藤さんは、九州・都城の製材工場を訪れました。「『ハンガーなんて針金しか作ったことないよ』と言われましたが、サンプルを見せたら泣きそうになるほど喜んでくれたんです。こんなに人を喜ばせることができるのかと思いました」


日本の森林が抱える深刻な問題

日本は世界第3位の森林国家でありながら、深刻な問題を抱えています:

  • 戦後植林された木々が伐採時期を迎えるも放置
  • 間伐不足による山火事・土砂崩れリスク
  • 海外資本による土地買収
  • 安い輸入材に押される国産材

「製材工場の人たちから現状を聞いて、これは何とかしなければと思いました」


端材から生まれる新しい価値

COPACKの取り組みは目を見張るものがあります:

  • 角材加工時の端材をアロマディフューザーに
  • ウッドチップを使った香り商品
  • 薄い部分でヒノキハンガー製造

「捨てられる予定だったゼロ円のものが、800円の商品になる。それが地域経済を回すんです」

大手企業との革新的コラボレーション

COPACK社の企業力を示すのが、大手企業との数々のコラボレーションです。

無印良品での成果

斉藤さんが手がけた無印良品との取引(小売商品)は大きな成長を遂げました。入社時、0だったものが、今では、約30商品も開発するほどまでになっています。

特に注目すべきは、斉藤さんも無印良品の「推し活」商品企画の仕掛人のひとりだったということです。

「アクリル製品の企画を一緒にやったんです。当時のMDの方と試行錯誤して作り上げました」


・多様な業界での展開

COPACKの技術力は様々な分野で活用されています:

  • ロフト・ハンズでの雑貨販売
  • デジタルサイネージ事業
  • リサイクル衣料品から作るハンガー

社会に開かれた企業―「東東京市」での地域貢献―

COPACK社は「東東京市」というマーケットイベントにも積極的に開催しています。


つながりが生み出すビジネス

「さまざま企業同士のコラボレーションも、このイベントでの出会いから生まれました。JRとつながって高架下にコーヒー屋さんができたり、ちょっとしたつながりでビジネスが発展するんです。」

・学生との協働への期待

斉藤さんは学生との連携にも積極的です:
「堀田ゼミ/キャリアトリガーの皆さんにもぜひ出店してもらいたいですね。いろんな人が集まって面白いことが生まれる場なんです」

転職という転機 アパレル業界での葛藤から環境ビジネスへ 

斉藤さんは以前、ライトオンでバイヤーやMDとして10数年間働いていました。しかし、業界の構造に疑問を感じるようになります。

「10万枚のTシャツを中国で作って、売れなかったらすぐセールで値下げ。売れ残ったら捨てられる。何のための仕事をしているのかわからなくなりました」

日本のものづくりへの想い

転職前の最後の取り組みとして、斉藤さんは日本製の衣料品ブランドを立ち上げました。関東の工場を一つ一つ回り、70歳を超える職人と一緒に1万円を超える高品質な商品を開発したのです。


・企業の力で夢を実現する

会社のお金を使ってやりたいことを実現するのが一番いいと思います。個人でできることには限界がありますが、企業の力があれば大きなことができる」

斉藤さんのこの言葉は、多くの就活生にとって新しい視点を提供します。自己実現と社会貢献を両立させる方法として、企業という基盤の活用を提案しているのです。


明確な大義名分の力

「何のために仕事をしているのかが明確になっているんです。世の中の役に立つということがすごくあって、だから面白いですよ」

COPACK社での仕事には明確な社会的意義があり、それが斉藤さんのモチベーションの源泉となっています。

ジブリが教える環境問題の本質

取材の最後に、斉藤さんは意外な話題を持ち出しました。

「『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』を環境問題の視点でもう一度見てほしいんです。宮崎駿監督は、プラスチック問題や自然との共生について、ずっと前から警鐘を鳴らしていたんです」

アニメーションを通じて環境問題を捉える視点は、まさに斉藤さんならではでした。

学生へのメッセージ 「何でも楽しんだ方が勝ち」

将来のキャリアに不安を持つ学生たちに斉藤さんからメッセージを頂きました。

「大学3年生で『こんなことがやりたい』って明確に思える人は少ないと思います。僕も大学時代はバンドしかやってませんでした」

ニルヴァーナ世代のミュージシャンだった斉藤さんは、学生の不安に寄り添います。

「面白いなと思ったことは素直に面白がること。見切りをつけるのが早すぎるともったいない。数をこなしていく中で、必ず何かの芽が出てきます。人生なんて暇つぶしだって誰かが言ってて、本当にそうだなと思ったんです。宇宙の規模から見たら、みんなの人生なんて本当に一瞬。だったら何でも楽しんだ方が勝ちですよ」

この言葉には斉藤さんの人生哲学が凝縮されています。この話を聞いて、まず楽しむことが近道なんだと改めて感じました。

取材を終えて

取材を通じて強く感じたのは、斉藤さんの「あらゆることに意味を見つけ出す力」です。ハンガーという身近なものから環境問題を考え、ジブリ作品から社会課題を読み解くこの柔軟な思考力こそが、イノベーションを生み出す原動力なのかもしれません。

COPACK社という企業の魅力は、単なる環境配慮にとどまりません。1950年代から続く一貫した理念、圧倒的な事業規模、革新的な技術力、そして何より働く人々の情熱。これらすべてが調和した稀有な企業です。

また、環境問題は決して遠い話ではありません。私たち一人一人の選択と行動が、未来を変える力を持っています。

斉藤さんの「何でも楽しんだ方が勝ち」という言葉を胸に、私たちも自分なりの意味と価値を見つけながら、キャリアを築いていきましょう!

斎藤さん、本日は貴重なお話ありがとうございました。

皆さんの就活や将来について考えるきっかけとなるような、素敵な企業や人物を引き続きご紹介していきます。次回もお楽しみに!

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